なにがそんなに悲しいの

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

犬飼 愛生

マンションの駐車場で

ちいさな女の子が声を振り絞って

この世の終わりの日の泣き方をしている

生まれてきた日と同じ　この世の終わりだ

なにがそんなに悲しいの

透明になる　お父さんお母さん

私は部屋で音楽を聴いていて

体を揺らしてリズムをとる

泣き声はやまない

あそこのレストランはデンジャラスゾーンなんだって

黄色い車に乗ったお父さんが申し訳なさそうに言う

見つかったらヤバイんだって言う

私は不愉快な気分になって

そんなのこんな狭いニッポンでどこでもデンジャラスゾーンだよ！と

怒って車を奪って逃走する　うるさい音楽をかける

北へ行っても

南に行っても

結局海しかない

最後にあるものは言葉ではなかったし

黄色い車はスピードがでるので

いとも簡単にニッポンの果てについたので悲しかった

なにがそんなに悲しいのと

見知らぬ男に声をかけられた

付いていって果てる

ニッポンの果てまで来てこうか！

違う！　本当は言葉が欲しいのに

道がどこまでも続けばいいとおもう

音楽もいつまでも続けばいいと思う

それ以上に

言葉が永遠に続けばいいと思う

突然みんなに謝りたい気分になって

罰として美しく伸ばした自慢の爪を短く切る

そこに髑髏のマークをあしらう

褒めてくださいね