古代への年賀状

（「交野が原」７８号）

山田兼士

年の瀬が近づいたので

古墳の森の郵便局で

年賀状を買って

千五百年前の隣人たちに宛て

陣中見舞いをしたためた

毎日お忙しいことと存じます

古墳造りは大変と思いますが

お元気でお務めでしょうか

楽しい労働を祈念いたします

お体第一に

つつがなくお過ごしくださいますよう

遠い未来よりお祈り申し上げます

二〇一五年　元旦

丘の上の公園から

古墳群を見渡した

はるかに幻視するのは

電力生産建造物群だ

千五百年後にはどうなっているのだろう

毎日お忙しいことと存じます

石棺造りは大変と思いますが

お元気でお務めでしょうか

苦しい労働を危惧いたします。

お命第一に

これ以上の災厄にみまわれませんよう

遠い未来よりお祈り申し上げます

三五一五年　元旦

そんな日がくるだろうか

全国五十余の石棺が

二十一世紀の古墳さながら

古代遺跡となる　そんな日が

くるのだろうか　いつか