ひとりでも死にはしないと誓った日
（「びーぐる―詩の海へ」１５号）
山田兼士
誰もいない海に来るようになったのは いつ頃からだったか
幼い子供たちと来た 秋もあった
ふたりで来た冬も ひとりの春もあった
自分が子供の頃…… にはなかったなあ
まてよ 歌の中でなら……
覚えているぞ 高校生の頃だ
凪の時代 母はモーレツ社員で
病んだ父は苦悩の日々 晩酌だけが一日のたのしみで
ヤング７２０を途中まで見ながら 支度して自転車で出る
トワ・エ・モワ 「誰もいない海」が送り出してくれる
ひとりでもひとりでも 死にはしないと
ひとりで生きる決心を した十七の秋のこと
きのう瓦礫の渚で 沖を凝視していた
ひとりぼっちの少年 それはぼくだ