俳回文日記20141114―20150228　　　

（「別冊　詩の発見」第１４号）

山田兼士

20141114 白雲に黄葉酔う子　荷も黒し

白雲の下

黄葉に見とれる黒衣の子が

黒いリュックを背負っていた　負けるな

20141114 有馬にて金の湯のんき　手にマリア

ひさしぶりの有馬

温泉三昧は金の湯から　呑気だ

マリア像を手にしている気分　感謝

20141214 コンサート歌声こたうトーサン子

同僚の作曲家のお嬢さんがコンサート

アリアの歌声で父の期待に応える

プログラムの解説は父　いい親子だな

20141221 アリアニコ飲みたい民の子にアリア

深夜ワインはイタリアのアリアニコ

いかにも酒飲みの民に相応しい地名

子にアリアを歌う農婦が目に浮かぶ

20150101 元旦の年賀いかんねノンタンが

ノンタンを年賀状に使ったのは昔のこと

友達のウサギが登場するので卯年　その

安易さを叱られそうな気がした　ごめん

20150110 幸いをワルツで釣るわ　お祝いさ

ウィーンリングアンサンブルのニューイヤーコンサート

今年も名演奏に感謝

ワルツで幸を釣るような感じ　お祝いです

20150111 思惟する詩　最後の語彙さ　記す意志

『氷島』を「思惟する詩」と呼んだのは寺田透

生硬な漢詩脈は晩年の意志を

強く示している　次は『宿命』

20150120 長き関　白河から詩　奇跡かな

白河は妻の父祖の地

長い関のイメージは古い古い記憶

いつか詩にできたら　奇跡かもしれない

20150129 意図すると喬の仕方トルストイ

辻井喬のロシア紀行をテレビで見る

その意図はトルストイの影を追うこと

いかにも辻井さんらしい仕方だ

20150219 旅の宿　十和田のだわと　どや、のび太

のび太にジャイアンが入浴剤「旅の宿」をプレゼント

お風呂好きのしずかちゃんが「十和田のだわ」

ドヤ顔のジャイアンが自慢する　歌うぞ！

20150224 夜の詩の最後の恋さ熨斗のるよ

長年続いた夜の詩会もこれで終了

最後の恋のようなもの

ノシをのせてお別れですね　お元気で

20150228 つじつまで締切決めし　で、末日

本誌作品締切は月末　三月刊行の

つじつまのためだが　二月は二十八日しかない

今日がその日　まだかな