「現代詩手帖」２０１９年６月号（創刊６０周年記念アンケート）

山田兼士

Ｑ１　「現代詩手帖」との出会いについて教えてください。

　１９７０年代前半、詩の祝祭の余韻が続いた時代でした。最初に買ったのは１９７３年９月号だったと思います。特集は二つあって、一つは「高橋睦郎」。連作『動詞』と鷲巣繁男による１００枚の高橋睦郎論。もう一つは「旅」で、山本太郎、川崎洋、吉増剛造による鼎談など。ほかに、北川透、鈴村和成、雉子耀という「気鋭の詩人」たちによる長編詩などがあり、投稿欄には佐々木安美、松下育男、瀬尾育夫らの名前が並んでいます。選者は北村太郎、鈴木志郎康、清水昶。今見ると錚々たるメンバーというしかないのですが、当時二十歳になったばかりの自分には遥か遠い世界にしか見えなかったことを覚えています。

Ｑ２　　「現代詩手帖」との関わりで、とくに印象に残っている時代や特集について教えてください。

　個人的にはやはり１９７０年代です。最近、１９７９年７月号の「散文詩」特集を再発見して、その充実ぶりに驚いています。谷川俊太郎、岩成達也、多田智満子、青木はるみ、伊藤比呂美、荒川洋治などの散文詩のほか論考も充実しているのですが、特にフランス、ドイツ、イギリス、ロシア、イタリア、アメリカといった欧米諸国の散文詩事情を紹介する執筆陣の充実ぶりには目を見張るばかり。あらためて、私を散文詩研究へと導いた一冊だったことを思い出しました。最近では、２０００年以後、谷川俊太郎の新詩集が刊行される度に組まれた特集です。

Ｑ３　私にとっての「現代詩手帖」とは？

　私の「現代詩」体験のかなり多くの部分を長く占めてきたメディアです。希少な現代詩専門誌として、いつまでも活動を続けてほしいと願っています。

Ｑ４　これからの「現代詩手帖」に向けて一言。

　詩書月評と詩誌月評に加えて、詩論時評を（隔月でも良いから）掲載してほしい。詩論へのより精緻な目配りが必要と感じています。

番外編（こちらは掲載いたしません）

　21世紀（2000年に入ってから現在まで）を代表すると思われる詩集、評論があれば教えてください（単行本以外の商業誌、同人誌も含む。作品一篇、論考一本単位でも構いません）。

　詩集では高階杞一の詩集『雲の映る道』『水の町』『夜とぼくとベンジャミン』。詩論では細見和之『「投壜通信」の詩人たち――「詩の危機」からホロコーストへ』