似非大阪人的告白　

（「ミて」第１３９号、２０１７年６月）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

山田兼士　　　　　　　

大阪周辺に暮らして四十五年になる

いまだに大阪ことばを話せない

というより

とうの昔にあきらめている

生まれ育った西美濃では

語彙は西風　アクセントは東風

普通に美濃ことばで話していると

変な大阪弁　といわれる

島田陽子さんは十一歳で

東京から大阪に引っ越してきた

ことばがおもしろくてすぐに染まったという

大阪ことばで詩や童謡を書いたひとだ

ネイティヴ・スピーカーになるためには

十一歳が限度

という説をきいたことがある

べつにネイティヴにならなければというわけでもないが

息子と娘は生まれも育ちも大阪近郊

さすがに父よりは大阪ことばが板についている

それでもこどもの頃から

ともだちに変な大阪弁といわれてきたという

そういえば

大阪で生まれ育った妻も

ことばは変な大阪弁

両親が東出身だからというのが言い訳だが

やむなく語彙の方を修正した

標準語が（ほとんど）ぼくのデフォルトだがや

これからもずっとこれでやっていくがや

せめて詩のことばに肉声が宿ればええんやけど